センバツの思い出
帝京高等学校
校長 金野眞行
あの感動の日々から1ケ月以上も過ぎた。夕暮のグランドでは、今日もひたむきに練習に励む野球部の諸君がいる。まるであの夢舞台での大活躍が遠い過去のことであるかのように・・・。
11年ぶりに出場したセンバツ。私にはあの時の感動が昨日のことのように思い出される。
天候不順で中止を心配した1回戦。甲子園に向かう途中で能登半島地震があったことを知る。試合は初回の大量得点と主戦投手の20奪三振という活躍で快勝。
続く2回戦は文句なしの晴天。試合は本校自慢の打線が爆発、序盤で試合を決めたかと思えた。しかし2回表、主戦投手が死球を受け戦列離脱のアクシデント。押せ押せムードが一転して蒼白となるがグランド上では救援投手が好投し大量点に守られ快勝した。
さあ次は夏の選手権で悔し涙を流したベスト8。しかも相手は名うての強豪。主戦投手の怪我の状態が気になる。そして今日からは勝てば連戦となる。応援団の数々の心配をよそに、選手たちは鬼門のベスト8も得意の初回の集中打で快勝。マウンドでは背番号10が躍動していた。さすがは本校が誇る投手の2枚看板。初戦の主戦投手に劣らない快投がチームを勝利に導いた。
熱戦の後、夕方になってから甲子園の周りを散策すると、初戦の時にはまったく開いていなかった桜も、今日は五分咲きくらいになっていた。満開の桜の中での優勝へと夢が膨らむ。
しかし勝負は甘いものではなかった。準決勝では1点差を追いつくことができず惜敗。大願成就の夢は夏に持ち越しとなった。11年ぶりに出場したセンバツで選手諸君は力一杯本当に頑張ったと思う。平成4年以来のセンバツの優勝旗は来年度以降へと夢を先延ばしすることになった。しかし、甲子園での熱戦は私たちに感動と勇気を与えてくれた。選手たちは私の心に満開の花を咲かせてくれたと思う。前田監督、そして野球部諸君すばらしい試合を観せてくれてありがとう。